※画像はイメージです。
こんにちは。やどかりサポート鹿児島のスタッフです。
11月に入ったとはいえまだまだ温かさが残っていますが、皆様お元気でお過ごしでしょうか?
やどかり事務所では9月に理事長とスタッフ達が次々とコロナに感染しました。その後はインフルエンザの襲来もありましたが、11月に入り何とか落ち着きを取り戻しつつあるところです。
季節の変わり目ですので、皆様もお体にはお気をつけてお過ごし下さい。m(__)m
おさらい…身寄りのない人の入院時身元保証問題
さて、このブログを読まれている皆様はこれまで入院して治療を受けられたことがあるでしょうか?
その際、医療機関から「身元保証人になってくれる人を探して下さい」と言われた経験はないでしょうか?
家族がいる人は身元保証人をすんなり出せる場合が多いのではないかと思うのですが、身寄りがない場合「身元保証人」の存在がネックになり、スムーズに治療を受けられない場合がしばしば見られます。
どうしてこうなってしまうのでしょうか?
厚労省の2018年のレポート※1によると、医療機関は入院時の身元保証人に以下のような役割を求めているんです。
- 入院費の支払い(87.8%)
- 緊急の連絡先(84.9%)
- 債務の保証(81.0%)
- 入院診療計画書への同意(49.9%)
- 医療への同意(55.8%)
- 本人の身柄引き取り(67.2%)
- 遺体・遺品の引き取り(55.3%)
※1 厚生労働省 2018年
「医療現場における成年後見制度への理解及び病院が身元保証人に求める役割等の実態把握に関する研究」
しかし、身寄りのない人たちは、このリストに載っているようなことをしてくれる身元保証人がいません。
身元保証人がいないせいで入院できないのであれば、大きな病気やけがをしてしまった時、「身寄りがない」という理由だけで命が危なくなってしいます。
日本総合研究所のレポート※2でも、2040年には1000万人、実に入院する高齢者の4分の1が身元保証人を探すことが難しいと予測されています。
なのに、先の厚労省のレポート※1によれば、2018年の時点では、「身寄りのない人の入院を拒否する」と回答した医療機関は、8.2%に上っていたのです。
※2 星 貴子 2019年
「急がれる医療同意に関する法制度の構築-身元保証人によらずとも患者の意思を反映できる制度に」
日本総研 Research Focus
この事態を憂慮した厚生労働省は、2018年4月に「身元保証人等がいないことのみを理由に医療機関において入院を拒否することについて」という通知を出し、令和元年の6月には「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」も続けて作成しました。
厚労省の通知から5年…身寄りのない人の入院問題はどのくらい変わったのか?
厚労省の2018年の「身元保証人等がいないことのみを理由に医療機関において入院を拒否することについて」という通知には、「入院による加療が必要であるにもかかわらず、入院に際し、身元保証人等がいないことのみを理由に、医師が患者の入院を拒否することは、医師法第19条第1項に抵触する」と明記されていました。
身寄りのない人々の中には、この通知が出された時に、躍り上がって喜ばれた人もいたようです。
例えばノンフィクション作家の松原順子さんは、この通知が出た時のことをこんな風に書き綴っています。
保証人を求める理由としてはほかに、入院患者には死亡のリスクもあり、緊急連絡先や遺体引受先としての必要性もあるようだ。
このような状況を受けてだろう。『週刊WEB 医業経営マガジン』2018年525号、医療情報ヘッドラインの記事によると、
“厚生労働省医政局は、4月27日に「身元保証人等がいないことのみを理由に医療機関において入院を拒否することについて」と題した通知を発出し、身元保証人の有無にかかわらず入院を受け入れるよう、各都道府県から医療機関に指導することを要請した。”
ということだ。
この通知から読み取れることは、ひと言でいうと、医師は入院時に身元保証人の提示を求めてはならない。つまり、わたしたちは、身元保証人がいなくても入院できるということになる。
わたしはこの記事を読んだとき、小躍りした。もし、今後、医療機関から身元保証人を求められたら、この記事を見せたらいいからだ。
入院時の「身元保証」要求は当たり前ではない!老後ひとり時代に考えるべき事 2019年6月30日 週刊女性PRIME
しかしこの通知から5年が経過した今、やどかりの地元の鹿児島を見ている限りでは、身寄りのない人が入院する際は「身元保証人」という言葉がまだ出ており、問題がくすぶり続けているように見えるのです。
今、鹿児島の身元保証の問題は一体どうなっているのか?
やどかりのピアサポーターで、身寄りのない方への医療機関への付き添いを何度もしてくださっているDさんにお話を伺いました。
Dさんインタビュー 通院支援ではどのようなことをするの?
Dさんこんにちは!
いつも利用者さんの通院をご支援いただき、ありがとうございます!
入院・通院支援の現場では、具体的にどんなことをされるのですか?
状況によって違いますが、すでに患者さんに段取りが出来ていて付き添うだけの時や、こちらで段取りするなど様々だと思います!
Dさんによると、第一回目の病院受診の際の支援の流れは、以下のような流れとのことでした。
- 本人から体調がどのように悪いのかお話しを伺う。
- 病院を探し、問い合わせをして、本人がその病院でよいと了承が得られれば、その病院に同行し受診する。
支援対象者の方が同席を望まれる場合や体調が悪く話しを聞ける状況にない場合は、先生の診断結果などを同席して一緒に聞くこともあります。
Dさんによると、通院になった場合は、以下のような手順になるとのことです。
- 通院日時の確認、予約が必要な治療の予約などをする。
- 通院の同行をする。
- 買い物支援をする。
???
「買い物支援」とはどういう支援なのでしょうか?
病気の種類や箇所、その日の体調によってはご自身でお買い物に行けない、重いものを持てない場合があります。
その時は食料や飲料、必要な物をお聞きし代わりに買い物に行き、ご自宅までお届けします。
退院直後は近所のスーパーに行けないくらい体調が悪い時もありますから、代わりに買い出しに行っていただけるのは本当に助かりますね!
(^0^)
入院支援ではどんなことをする?
通院だけでなく入院になる場合もあります。
その時の支援内容はこんな感じですよ!
- 病院と入院の日時、書類等、入院の決まり事、必要な物などを確認する。
- 入院に必要な物を準備する。
- 入院当日に同行し病院にいく。院中、お見舞いや必要な物を買い届ける。
- 退院の日に迎えに行く。
なるほど、身一つで入院する訳にもいかないですもんね…(;´・ω・)
入院前に必要なものや、入院中必要なものにはどのようなものがあるんですか?
入院準備品としては病院により様々ですが、ざっとこんな感じですかね。
- 洗面用具
- タオル
- パジャマ
- 下着
- T字帯
- スリッパ
- テッシュ
- ストロー
- コップなど…
入院後は病院に売店がなかったり、売店があったとしても売ってないものを届けに行きます。
飲料品や食料品が中心で、長期入院の方はイヤホン、ラジオ、電池などです。
…そして入院するには、身元保証人が必要です。
まだ残ってたんだ、その制度は…(´;ω;`)
家族以外の人が病院に付き添った時の病院側の反応は?
日本の場合、患者の通院に付き添うのは家族が多いと思いますが、ピアサポーターのような「家族以外の人」が病院に一緒に付き添う場合、病院の反応はどのような感じなのですか。
病院や看護師さんによって様々だと思いますが、大きな病院ほど家族じゃないと制限されることが多いと感じます。
プライバシーが厳しい時代だと思いますので、しょうがないことかなとも思います。
退院して家に帰った後、家で一人で寝ていることはできても、一人で買い物に行くまで体調が回復していない方もいると思います。
頼れる家族がいない方を、医療側は想定している感じなのでしょうか?
Dさんによると、医師をはじめとする医療者の方はとても忙しそうで、患者の退院後のことまで気にかける余裕はないのでは?とのことでした。
また、日本の単身世帯は38%ですが、鹿児島だと「本当に全く身寄りがいない人」と言うのは割合として少ないので、現場ではそれほど問題とされていないのかもしれない…とのことでした。
厚労省のガイドラインだと、「身寄りのない方の退院支援についてはケアマネージャーや生活相談員などが本人の意思を聞いて退院先の選択や手続きの分担を」…と言うようなことが書いてあります。
一見制度が充実しているように見えるのですが、どこまで実現しているのかは地域によって随分差がある状態になっているという事でしょうか?
診察時に退院後のことまで気にかけてくださる先生も時々いますよ。
でも「家で一人で療養するのは難しそうだから、身寄りがない方にはこういう制度がありますよ」とまで言われたことはないです。
Dさんのお話だと、医療の現場はとても忙しそうなので、患者さんの退院後のことまで気にかけるのは難しいのではないか?と感じるということです。
大きい病院だと「院内に社会福祉士を置いているので、そこで聞いてくれる?」と言うスタンスのようですが、そのような制度が存在していることが、残念ながら世間的にも、身寄りのない人々にも認知されていない。
病院内に相談できる窓口があるのであれば、会計の際に「身寄りのない方にはこんな相談窓口を置いていますよ」という内容の用紙をはさんだりしてくださると助かる、とのことでした。
ちなみにやどかりの理事長であり、身寄りなし問題に長年関わってきた芝田氏に身寄りのない人が使えるサービスについてご意見を伺ったところ、以下のようなお答えでした。
「身寄りがない場合のサービスってそんなにはないかと思います。
『身寄り』問題はこれに対応する社会資源不足が大きな課題ではないかと認識しています」
介護や障害認定されたりしている場合は福祉サービスにつながるけど、一時的に病気やケガで動けなくなった場合は使えるサービス無く、「助けてくれる家族がいる」という前提がこのご時世でも継続しているとは…
(;゚Д゚)
今後ますます単身世帯が増加するのは確実なので、身寄りのない人が使える社会資源がもっと増えて欲しいです…!
後編では…
2023年の鹿児島市では、身寄りのない人々の入院時身元保証問題は、残念ながらまだ存在していました。
後編では、身寄りがない人が実際に医療機関に行った場合どのような事が起こるのか、やどかりの互助会ではそれにどう対応しているのかについて書きます。