はじめに
やどかりサポート鹿児島では、2022年4月〜2023年3月にかけて、独立行政法人福祉医療機構の助成金で「ミッションへの参加が互助を促進する当事者主体のシェルター運営事業」を行っておりました。
以下リンクから、成果報告書(pdfファイル)をダウンロードすることができます。
令和5年度 独立行政法人福祉医療機構 社会福祉振興助成事業_NPO法人やどかりサポート鹿児島_報告書
このシェルター事業は一般的なシェルターとどのように異なるのか?
通常、NPOが運営するシェルターでは、多くの場合、NPOのスタッフがシェルターに入居した人の支援をすることが多いです。
しかし、やどかりのシェルターでは、シェルターに入居した人の支援の一部を、シェルターから退去後に地域に住んでいる人(ピアサポーター)が担っています。
この運営方法にどのようなメリットがあるかと言うと、以下の2点が最大のメリットであると思います。
①支援をする際に「支援者・被支援者」と言う2項関係性が生まれがちだったが、より近い立場のシェルター卒業利用者(ピアサポーター)が支援を行うことで、「支援者・被支援者」という関係を超えられる(シェルター利用者も支援される立場に固定されるのではなく、やがてシェルター利用者を助ける立場に移行することができる!)
②近隣の人々に支援してもらうことで、シェルターを退去した後も地域に知り合いを持つことになり、シェルター退去後の孤独・孤立が防止できる。
2023年4月から3部屋のシェルターを運営しておりましたが、1年間で延べ30名の方を支援することができました!
以下、シェルターを利用した人のデータの分析をしていきます。
シェルター利用者の年齢層
利用者の年齢層は50代が最も多く、30代・40代が次に続いています。
シェルター利用者の性別
2023年度はシェルター利用者は、女性が10名、男性が20名となりました。、
シェルター利用者の属性
シェルター利用者の属性は、「ホームレス生活者(10名、34.5%)」が最も多くなりました
高齢者の方や身体障がい者の方は、シェルターに案内する際に、エレベーターの有無など屋外までの移動手段を考慮しなければならない場合があり、今後シェルター物件を選定する際に注意していきます。
シェルター滞在日数
短期的な保護を目的とする民間のシェルターは、滞在期限を2週間ほどに定めているところが多いです。
しかし今年度のシェルター利用者では、2週間以上滞在している人が70%以上に上っています。
滞在日数が多くなる要因としては、居住困難に陥った理由が複雑な場合があります。例えばDV被害などの被害者の場合、身一つで逃げだしてきたのにもかかわらず資産があるとみなされ、生活保護の手続きに時間がかかる場合などがあります。やどかりのシェルターにも、他のシェルターの滞在期限が切れてしまい、移ってこられた方が何人かおられました。
長期滞在が必要な人のために、期限を区切らないで使用できるシェルターは非常に重要であると考えます。
終わりに
やどかりは、2019年から当事者主体の居住支援を推進しており、2022年には当事者が中心となってシェルター運営を行い、アルバイト雇用を開始しました。当事者がシェルター運営に参加することで、コミュニティのつながりが深まります。更にLINEなどのSNSを使うことで互助の基盤がさらに強化されることがわかりました。
一方で課題も出ています。
これらの活動は、コミュニティの重要性を確認し、ピアサポーターの役割を明確にしましたが、無償の互助と有償の互助の緊張関係や、コミュニティの維持管理の課題も発生しています。また、コミュニティの形成には地理的な近接性が重要であり、他地域への展開には実践と研究が必要であることもわかりました。
2024年度もやどかりはシェルター事業を継続し、これらの課題の解決に向け、取り組んでまいります。
助成金事業の詳しいご報告については、以下の報告書にまとめましたので、お読みいただければ幸いです。
令和5年度 独立行政法人福祉医療機構 社会福祉振興助成事業_NPO法人やどかりサポート鹿児島_報告書
シェルターの運営を続けられたのは、ご関係者の皆様の並々ならぬご協力のおかげだと思っております。
本当にありがとうございました。