はじめに ~今回の再提言の背景~
今から約1年ほど前、2024年8月に、やどかりでは鹿児島県及び鹿児島県全県の市町村公営住宅の保証に対して以下のような提案をしました。
「連帯保証人を見つけることができず、居住困難に陥っている人々のセーフティネットを果たすべき公営住宅で、連帯保証人が求められるのはおかしいのではないか?公営住宅における連帯保証人制度を廃止してはどうか?」という提言です。
- 公営住宅においては,可能な限り速やかに,保証人を求めることをやめてください
- 国及び地方公共団体においては,認定家賃債務保証業者による保証の提供が早期に実効性ある制度となるよう,運用や活用について検討してください
- 民間においても,改正法に基づく居住支援が充実したものとなるよう,特に認定家賃債務保証業者による保証の活用について検討してください
それから1年。いまだに鹿児島県では全ての公営住宅において、保証人が必要とされている状態にあります。
この状況を受けて、やどかりでは令和7年10月に再度市町村に向けて再提言を行いました。
提言の概要を公開いたします。
いまこそ住まいに関する保証を求める慣行を見直し
「つながり」を提供する居住支援を充実させよう(その2)
現在どれくらいの割合の公営住宅が「保証人」を求めているか
国交省の調査によると,令和6年4月1日現在,戸数ベースで68.1%の公営住宅がすでに保証人を求めないとしています。
令和5年4月1日におけるこの数字は58.8%でしたので,全国においては一年間で10%近くの公営住宅が保証人を求めない住宅に生まれ変わったことになります。
しかしながら,鹿児島県においては,2025年10月現在,いまだにすべての公営住宅において原則保証人が必要とされているものと理解しています。
保証よりも大事な「つながり」
そもそも,現在の保証人制度は,人が親族や地域となんらかのつながりがあって,その人になにかあったときには,そうしたつながりのある人たちが対処するものだという常識や社会システムを前提として構築され運用されてきました。
しかしながら,核家族化,地方から都市部への人口流動,地縁や社縁の希薄化といった事情を背景に,こうした前提自体が崩れてしまっており,多くの人にとって保証人を求められることそれ自体が酷なこととなっており,また,保証人制度それ自体が機能しなくなってきています。
こうした現状に応じて,家賃債務保証業者等の機関を活用する動きが広がってきています。家賃債務保証業者の活用自体は否定されるべきものではなく,やどかりプラスも改正住宅セーフティネット法により誕生した認定家賃債務保証業者の活用等を推進すべきであると考えています。しかし,保証だけでなく,保証とあわせて「つながり」の提供を行わなければ,入居者の抱えるリスクを金銭に換算して保証人等に負わせるだけであって,入居者の幸せや地域の福祉の向上にはつながりません。
すなわち,様々な社会の変化に伴い,いま必要とされているのは保証以上に「つながり」であるということです。これは,保証という課題をつながりという情緒的・観念的なものにすり替えようとしているのではありません。 我々の社会が抱えている課題が,急速な単身社会化,社会的孤立の深化等により,保証という課題から「つながり」というより根幹的な課題,社会システムを支えるインフラの課題へとシフトせざるを得ない状況に至っているのではないかと考えるのです。
やどかりプラスからのご提案
やどかりプラスでは,2026年3月31日に公営住宅における保証の提供を停止するのにあわせて,2026年4月以降「孤独死ゼロアクション」の全国展開を開始します。
「孤独死ゼロアクション」は参加者が,SNSを用いて互いに見守り見守られることで孤独死ゼロを目指す取組みです。具体的には,参加者どうしがSNS上で5人程度のグループを作成し,毎日必ず何らかの発信をすることを約束します。発信がない場合等,グループ内のなかまの異常に気付いた場合には,自らその安否を確認するか,孤独死ゼロアクションに協力する機関に連絡し同機関の者が駆けつける等します。このように「孤独死ゼロアクション」は,単に孤独死を防止するだけでなく,つながりあい,互いに見守りあう活動を通して孤独そのものをなくし,協力機関をとおして地域福祉の向上を目指す活動となっています。各位の地域においても,公営住宅の保証制度を廃止し,いまや保証以上に重要なものとなった「つながり」を創出するための取組みを始められませんか。
やどかりプラスは,そのために「孤独死ゼロアクション」へ参加されることを提案いたします。




