合併
2024年8月10日,NPO法人やどかりサポート鹿児島とNPO法人つながる鹿児島は合併し,NPO法人やどかりプラスが誕生しました。
やどかりプラスは,居住支援と『身寄り』問題に取り組むNPO法人として,「住まいとつながりをすべての人に」届けるべく,すべてを失ってももう一度つながれる社会,『身寄り』がなくても困らない社会の創造を目指していきます。
この合併を機に,やどかりがずっと続けてきた「地域ふくし連帯保証」の今後について,みなさまにお知らせしたいことがあります。
法改正と自民党の提言
まずはその背景から。
2024年5月30日,住宅セーフティネット法改正案(以下,改正法,といいます。)が衆議院で可決・成立し
ました。本改正では「認定家賃債務保証業者」が誕生し,国として「断らない家賃債務保証の提供」を目指
す姿勢(保証が住宅確保の障害とならない状態の構築)が見られます
同月21日には,自民党が,『新しい社会保障』に向けて==若者から高齢者まで誰もが安心して歳を重ねる
ことができるよう,身寄りがない独居者等を地域で支える新しい社会の形,地域力の強化(地域共生型セー
フティネット・エコシステムの構築)==という提言を出しました。「住まい」という項目を設け,「身元
保証を求める慣行の見直し」が必要であるとし,特に「家賃についての身元保証人が不在であることを理由
とした受け入れ拒否を禁止する公営住宅向けのガイドライン」の周知徹底を求めています。
このように社会が変化していこうとする兆しが見える一方で,やどかりの足元では,変わらず住宅に関する
保証に関する相談が相次ぎ、特に公営住宅に関する相談がやどかりにとって大きな負担となっています。
2024年2月に,ある公営住宅にお住まいだった利用者が亡くなられ,行政からやどかりに対して残置物撤去
の要請がありました。素人の見積りではありますが,50万円を下らない費用がかかる量の残置物でした。
やどかりのような小さなNPO法人が,住宅セーフティネットの要であるはずの公営住宅の保証を担っている
という矛盾が極限に達しつつあります。
「いつか国にお返しする」
もともと,やどかりによる住居確保時の保証の提供はやむにやまれぬ状況の中で始めたものでした。保証を
提供しなければ,住宅を確保することができず,精神科病院から退院することができない,ホームレス状態
から脱することができないという方々が目の前に多数おられたのです。
2007年,そうした問題の解決のためにやどかりは保証の提供を始めましたが,この仕事は明らかに公的な
仕事である,本来ならばやどかりのような小さなNPOが担える仕事ではない,だからこの仕事は「いつかは
国にお返しする」と思いながら続けてきました。
あの時から17年が経ち,今回の法改正や自民党の動きに触れ,ついにその時が来たのではないか,と感じています。
今後のやどかりの行動
そこで,やどかりは,今後,以下のように行動してまいります。
①令和8年3月31日をもって,公営住宅における保証の提供を停止します
②民間賃貸住宅における「地域ふくし連帯保証」はこれまでどおり継続します
ただし,すでにお住いになられている方に対する保証の提供(保証の「承継」)は行いません
③改正法に基づく認定家賃債務保証業者により「断らない家賃債務保証の提供」が実現できるよう,
認定家賃債務保証業者と連携するとともに,調査・研究・情報提供等に協力します
④住まいに関する保証を求める慣行が見直され,保証ではなく「つながり」が提供される社会を目指
します
以上のような行動を取る理由は次のとおりです。
①については,公営住宅においては,可能な限り速やかに,保証人を求めることをやめるべきだと考えるか
らです。国交省の調査によると,令和5年4月1日現在,戸数ベースで58.8%の公営住宅がすでに保証人を求
めないとしています。一方で,鹿児島県においてはいまだにすべての公営住宅において原則保証人が必要と
されているものと理解しています。
なお,令和8年4月1日以降については,これまでの「地域ふくし連帯保証」の実績を基盤歳,地元の身近な
存在となり得る福祉関係者とやどかりプラスが協働して,公営住宅入居時の「緊急連絡先」(家賃債務等の
保証は行わず,利用者に対して生活支援,見守り,相談支援等を提供する者)になる仕組みを構築していき
たいと考えています。
②については,民間においても保証人を求める慣行を見直すべきだと考えるもののそれにはまだまだ長い歳
月が必要だと予想するからです。ただし,現に在住し家賃滞納等のトラブルもない方について,従前の保証
人が欠けたからといって新たに保証人を確保しようとしてやどかりにこれを求める場合についてまで,やど
かりがリスクを負担する理由はないと考えます。
③については,現在の民間賃貸住宅の商慣行を前提に,国が認定家賃債務保証業者を誕生させ「断らない家
賃債務保証の提供」が実現しようとしている姿勢を評価し,これに協力したいと考えるからです。認定家賃
債務保証業者が「使える制度」になるよう,国・地方・民間様々なステージにおいて積極的に活動していき
たいと考えています。
④については,住まいに関する保証人の確保に困難を抱えている方々とともに活動を継続してきて,また
,『身寄り』がない方々に対する支援を通じて,ほんとうに必要なのは保証ではなく「つながり」であると
考えるからです。
住まいに関する保証を求める慣行を見直そう
国,地方公共団体,居住支援に関わる方々等に対して次のように求めたいと思います。
①公営住宅においては,可能な限り速やかに,保証人を求めることをやめてください
②国及び地方公共団体においては,認定家賃債務保証業者による保証の提供が早期に実効性ある制度となるよう,運用や活用について検討してください
③民間においても,改正法に基づく居住支援が充実したものとなるよう,特に認定家賃債務保証業者による保証の活用について検討してください
「つながり」を提供する居住支援の実現
やどかりは,2007年「保証とつながりの提供」を理念として活動を開始しました。住宅の確保に困難を抱
えている方々にとって,差し当たって保証が必要なのはもちろんですが,本当に必要なのは保証ではなく「
つながり」であると考えたからです。
今般の法改正や提言を受けて,やどかりは「保証」の仕事は可能な限り「国にお返しし」,より本質的な「
つながり」の提供に専心していきたいと思います。
具体的には,「当事者主体の居住支援」「孤独死ゼロアクション」「つながるあんしん事業」といった,当
事者の「つながり」づくりとその「つながり」を基盤とした諸事業をより充実発展させ,すべてを失っても
もう一度つながれる社会,『身寄り』がなくても困らない社会を実現してまいりたいと考えます。
今後とも,やどかりの活動に対してご支援をたまわりますよう,なにとぞよろしくお願い申し上げます。
npo法人やどかりプラス
理事長 芝田 淳
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