ーやどかりブログー 家族と早くに死に別れたせいで連帯保証人を用意できず、居住困難に直面してしまったFさん

やどかりスタッフ

皆さんこんにちは!やどかりサポート鹿児島のスタッフです。
鹿児島は台風が近づいていますが、皆さんお家おこもりの準備は整っておられますでしょうか。

今日のやどかりブログでは利用者のEさんのインタビューを掲載します。Eさんは一見どこにでもいる40代男性。穏やかな雰囲気で言葉を選びながら話して下さいます 
しかし、そんなFさんは若い内にお兄さんや父親が無くなってしまって「身寄り」がなく、そのことで様々な困難に直面しています。

日本では単身世帯が38%とかなりポピュラーな存在になっているとはいえ、身寄りがない人が直面しているトラブルはまだまだ認知度が少ない問題なのではないかと思います。
やどかりがアプローチしている「身寄り問題」に焦点を合わせていく上で、当事者のストーリーを世に出すのは、とてもやりがいがある仕事だと思っております。 

穏やかな雰囲気で街に自然に溶け込んでいるFさんが、どんな理由で居住困難に直面したのかを知っていただきたいと思います。 

目次

Fさんがやどかりを利用されたきっかけ 

やどかりスタッフ

やどかりの連帯保証を利用された経緯について、ざっくり教えていただけますか?

Fさん

元々は香川で仕事していましたが、その後派遣で働くようになりました。
派遣社員を選んだ理由としては、実現させたい夢があって、そのために時間に都合をつけたり、お金を貯めたりしていたんです。 

しかし40代になるまでに金銭的なトラブルや親兄弟の死が重なり、「身寄りがない」状態になってしまいました。
家を借りようとしたのですが、保証人の問題でどこに行っても断られ、最後の最後にやどかりサポート鹿児島の存在を知り、ようやく今の家に入居できた感じです。 

Fさんが居住困難に至るまで  

中学生の時に母親が突然借金と共に失踪 

やどかりスタッフ

元々どちらのご出身なのですか?

Fさん

生まれたのは愛媛県で、その後ずっと過ごしたのは香川県になります。 
父母と兄の4人家族で、兄とは6つ年齢が離れています。父親は元自衛官で、職人気質の実直な人でしたね。 
 
家族4人で暮らしていたのですが、僕が中学1年生の時に母が突然失踪してしまいます。僕は母親が好きでしたから、訳が分からないし、母親を探したいと強く思っていました。でも、父親は「探すな」と言うんです。そのせいで大分荒れましたね。父とは何度も殴り合い、警察沙汰になったこともありました。 

Fさん

母親の蒸発の原因は今でも判明していないけれど、彼女は失踪する前に周りの人々や親戚からお金を借りていました。母の借金は父親が一生懸命働いてコツコツ返済していましたが、その件以降、我が家と親戚の関係は切れてしまいました。
家は裕福ではありませんでしたね。

やどかりスタッフ

Fさんが「連帯保証人がいなくて家が借りれなかった。だからやどかりに来た」と仰っていたので、自分はてっきり「ひとりっ子なのかな?」と思っていました。そのような事情があったんですね…

Fさん

兄弟もいたんですが、早くに亡くなってしまったんです。 

Fさん:
高校を卒業後に僕は7年ほどとび職で働き、その後はショッピングモール併設のゲームセンターで働きました。アルバイトで入ったのですが、働きが認められ、店長にもなりました。

ゲームセンターで接客し、人と話すことはとても楽しかったのですが、職場の合併で「正社員にならない」という話が出たのです。でも、正社員になると転勤が多くなるし、仕事の責任も重くなるという話を聞いて、正社員にならずにその職場をやめました。

やどかりスタッフ

確かに正社員は責任もあるし転勤も多いけど、経済的に安定するのでは?と思います。
断る理由が他にもあったのではないですか? 

Fさん

夢のためにプライベートの時間を確保したかったのです。

僕は幼稚園の頃から空手をやっているのですが、いつか道場を開きたいという夢があったんですね。
道場開業のため派遣の給料から貯金もコツコツしていて、空手以外にキックボクシングや総合格闘技も習得し、あと少しで実現するところまで来ていました。

Fさん:
道場を開く話は父親にもしていました。母親の失踪後にぶつかり合った相手ですが、最後の方はとても関係が良かったです。 

道場計画が実現しかけたころに父親は病気で亡くなりました。その少し前に兄も病気で亡くなっています。
つまりこの時点で僕は「身寄りがない」状態になったのです。
 

 

親友の持ち逃げ+パートナーとの別れ+派遣切りに合う 

Fさん

道場を開くにはお金がかかるので、親友2人と僕の3人で共同で開業しようという話になりました。 
親友がその段取りをしてくれて、僕は何年も派遣の仕事でためたお金を彼に預けました。 

ところが、彼がお金を全て持ったまま失踪してしまいます。
自分は数百万円の被害にあい、もう一人の友達も少なくないお金を持ち逃げされてしまいました。 
そんなことする人間じゃないと思ってお金を預けたので、今でもショックです。 

Fさん:
狭い地域なので
Fがお金を持ち逃げされたらしい」という噂が地元中を駆け巡りました僕はその頃県の金融機関で派遣社員として働いていたですが、その話を上司が聞くこととなり、「噂を聞いた。職場を辞めてくれない?」と言われてしまいました。 

やどかりスタッフ

Fさんは持ち逃げの被害者なのに、どうしてそういう話になるんですかΣ( ̄□ ̄|||)?

Fさん

どうしてでしょうね…。「金銭的にダメージを受けている人間にお金の仕事を任せるわけにはいかない」と思われたのかもしれないです。 

Fさん:
さらにショックな出来事は続きます。 

僕にはその時10年以上お付き合いして「そろそろ結婚しよう」という段階になっていたパートナーがいました。しかし噂が回ると同時にパートナーのご両親から交際をやめて欲しいという声が上がります。「経済的基盤が薄い人間と自分の娘が一緒になるのは不安」というようなことでしたね。 

持ち逃げ事件から失業、そして彼女との別れ。嫌なことが次々に起こり、僕は地元にいるのがとてつもなく苦痛になってしまったんですね。地元が嫌というか、生きているのさえ嫌になり、死に場所を探して2か月ほどバックパッカーをしていました。 

自分が今も生きているのは、たまたま出会った農家のお爺ちゃんお婆ちゃんのおかげです。 
所持金も少なくボロボロで彷徨っていた時に、畑にいるおじいちゃんおばあちゃんに「仕事を手伝うから、水と食料を分けて欲しい」と頼むと「そんなことせんでいいから水と食料をやる」と自宅に入れ、見知らずの僕を一晩泊めてくれました。「仕事もお金も彼女も無くなったし、もう死にたいです」という話を聞いて、「死んではいかん」と本気で怒ってくれた。あの2人がいなかったら僕は今ここにいないのではないかと思います。働けるようになってから二人にお礼にも行きましたよ。 

静岡の工場に就職するも、再度の派遣切り 

寮付き派遣時代、Fさんの住んでいた部屋に近い間取りのお部屋。
マンションの1室だったという。
Fさん

老夫婦から本気で怒られたことで僕は立ち直り、仕事を探しました。
5年間ほど色々な職場を回りましたが、最終的に静岡で寮付きの自動車工場で働きました。 
最初は精密機械のウエハーを作る仕事から入って、何種類か職種を回り、最終的に車の検品をしていましたね。 

やどかりスタッフ

“寮”と聞くと、大学などのによくあるタイプの相部屋の“寮”を想像してしまって、あまり住環境が良くないのでは?と感じます。
寮を出て引っ越ししたいとは思われなかったのですか? 

Fさん

僕の住んでいた寮は1棟借り上げ型のマンションのワンルームで、プライバシーが確保されているタイプだったんですよ。
特に不便もないので、「ここから出て自分で家を借りよう」とは思わなかったんですね。 

Fさん:
この会社では5年働いていましたが、親会社が経営不振で合併することになり、半分くらいの社員が辞めさせられることになりました。 

僕は会社から「別の工場を紹介するのでそこで働きませんか」と言われたのですが、知り合いに声をかけられて「九州で新しい仕事を探そう」と思ったんです。 

 

やどかりスタッフ

Fさん、もしかして旅行好きだったりされませんか?
(*´ー`)

Fさん

はい。旅行は大好きです。

鹿児島で身寄りがない人の住居探しの困難に直面する 

Fさん

友人に誘われてやってきた鹿児島でしたが、いざ仕事を探し始めると、うまくいかなかった。
派遣で貯めた貯金もあったのですが、いつまでも友達の家にお世話になるわけにもいかないから、宿泊費や食費を出さないといけない。
住居がないことで生活にものすごくコストがかかり、貯金はみるみる減っていきました…。

Fさん:
とうとう本当にお金が無くなり、生活保護を申請しようと鹿児島市役所に向かいました。そして保護を申請したのですが…僕には住所が無いんですね。 
役所の人から「住所を決めたら生活保護が通るよ」と教えてもらい、不動産巡りを始めましたが、連帯保証人になってくれる人がいないと物件探しはとても大変なんですよね…。 

やどかりスタッフ

今は保証会社も多いし、「保証人なし」と書いてある物件もよく見ます。それでも“大変”となってしまうのはどうしてなんでしょう…?
(;д;)

Fさん

僕は家族がいないし、親戚との関係も断絶しています。
「保証人は不要です」と広告されている物件を探して不動産屋を回るのですが、落とされてしまうんです。 

Fさん

それに、保証会社を使うにも連帯保証人が必要だったりするんです…。
「自分みたいに身寄りがない人間は、一体誰に頼ったらいいんだ?」と不安になりました。

やどかりスタッフ

保証会社を使用する場合、収入審査もあると聞いています。
Fさんのように「新しい土地で家を見つけ、新たに仕事も始めたい」というようなケースだと難しいということなんでしょうね…( ;∀;)。

「やどかりサポート鹿児島」の存在を知り、物件確保へ

Fさん

不動産屋をいくら回っても入居できる物件は見つからず、僕は絶望していました。
そんな時に「ここを使えば家を確保できるかもしれない」とやどかりの存在を知らされました。 
HPからメールで問い合わせたらすぐに返事が来て面談が行われ、「助かった!!!」と思いましたね。
  

Fさん

住所が決まったので、役所に連絡して生活保護も申請しました。  

やどかりスタッフ

保護申請から受給開始までに2週間くらいタイムラグがありますよね?
その期間はどうやって乗り切ったのですか?
(;゚Д゚)

Fさん

友達が「それくらいの期間なら、自分の家に居候してもいいよ」と言ってくれたんです。 
それに、やどかり理事長の芝田さんが「物件に早めに入居してもいいから」と言ってくれたので、野宿はまぬがれることができました

Fさん:
やどかりに紹介してもらった物件は最初から家具・家電がついており、大分助けられました。
生活保護には需給の際、家の備品を購入することができる家具什器費という予算があります。でも金額限られているため、家電をそろえるのに困るケースが多いのです。
 
 

やどかりスタッフ

住居を確保できて本当に良かったですね…。
その時のお気持ちを教えていただけますか?

Fさん

やどかりに「連帯保証を引き受けるにあたって面接がありますよ」と言われた時は「え?面接あるの???」と感じ、かなり緊張しました。 
だけど知らない人の連帯保証というのはリスクのある行為ですし、仕方がないと思います。

Fさん:
そもそも「身寄りもいなくてその時点で仕事もないけれど保証する」というやどかりのような団体はかなりレアではないかと思うので、生活保護困窮者に対して、もっと情報発信して欲しいですね。 

 それと、僕は色んな要因があって身寄りがなくなってしまったのですが、日本は会社に入社する時にも入院する時にも連帯保証人や身元保証人が求められる場面が多く、「生きづらい世の中やな」と感じてしまいます。 

“やどかりライフ”のメンバーになってからの感想 

やどかりスタッフ

やどかりライフというコミュニティへの参加や、互助のある生活を実際に参加して感じたことを教えてください。

Fさん

面接時にやどかりが利用者同士の互助(やどかりライフ)を促進していることや、互助会「ゆくさの会」があることは伝えられていました。
でも、それが何なのか、参加ってどういうことなのか具体的に全然イメージできなかったから、分からないまま承諾してしまった。

Fさん

今も「やどかりライフって何?」「互助ってどういうことをしているの?」と聞かれて、うまく説明できる自信がありません。 
だから面接時にもっと詳しく説明して欲しいと思っています。
 

Fさん:
僕は人としゃべることが好きなので、知らない人と全く関わりを持たないより関わりがあった方が良いと思っています。研修会やサロンなどのやどかりの“つながり”にはマイペースに参加しているので、合っているのかも。 

趣味の合うメンバーとは一緒にカラオケに行ったり、自分の得意な格闘技の護身術講座を開きたいねという話をしたりしています。 
ただ、現在の居場所サロンは自分の住んでいる場所から離れているので、僕らの住んでいる地域にもああいう居場所があればいいのにと思っています。安否確認を兼ねてリアルに頻繁に会える居場所があればいいですね。 

今後の予定について 

Fさん

鹿児島に来てから結構経ったんですが、最近になって体にガタが来ており心臓の薬を服薬しています。 
でも、保護のままずっといるのは良くないし、「何とかもう一度武術を教えられるようなりたい」と思っているので体調を整えています。

今の時代は便利で、格闘技をYOUTUBEで教えることもできるので。 

Fさん

友達に道場の開業資金を持ち逃げされた時は、本当に許せないと思っていました。でも、あの事件があって、今の自分がここにいるので許せるかなとも思います。 
今は自分の目標に向かって進んでいきたいと思います。  

Fさんのインタビュー後記 

身寄りがあって保証人に困ったことがない人は「連帯保証人を用意するのは当たり前でしょ」と考えがちですが、家族のトラブルや死、高齢化で連帯保証人が用意できなくなる可能性は誰もが持っていると思います。 

はにかむような笑顔で言葉を探しながら、ゆっくりと話して下さるFさん。同じ人間同士なのに、身寄りがあるのとないのとで、とても多くな断絶があるということに気付かせてくれたインタビューでした。 

Fさん、長時間にわたってお話しいただき、本当に有難うございました。 


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https://congrant.com/credit/form?project_id=6337

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この記事を書いた人

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