こんにちは!やどかりスタッフです。
今年のお盆はとても暑いし、台風までやってきましたが、皆様はいかにお過ごしでしょうか。
日本でお盆というのは、故人や祖先の霊を家に迎え、供養する季節と言われています。
私達やどかりでも、先に亡くなったなかまたちのためにお盆の供養を行いました!
誰もがおひとり様になる可能性を持っている
とてもぶっちゃけた質問で恐縮なのですが、この文章を読まれている皆様はご自身の葬儀についてどのようにお考えでしょう?
2022年の厚生労働省による国民生活基礎調査によれば、日本の単身世帯率は全世帯の32.9%になりました。
「自分の葬儀は家族がしてくれるはずだから安心だ」
そう自信をもって答えられる方は、果たしてどれくらいいらっしゃるでしょうか?
今は家族がいる人でも、家族が遠方に離れてしまったり、先に死んでしまったり、連絡がつかない状態になることも考えられます。
特に女性の場合は男性より寿命が長いので、パートナーに先立たれた後、近くに住んでいる家族もおらず一人になってしまうこともあります。
つまり今はおひとり様でなくても、将来的におひとり様になる可能性は誰にでもあると言えましょう。
大多数の人は、ある日いきなり死に至る(突然死する)わけではありません。
年を取って体が少しずつ衰え、一人でできることが少なくなり、死に至ります。
そして死んだ後の手続きは、本人は絶対にすることができません。
「死んだ後の事なんてどうでもいいよ」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかしそれでも物理的に死体が残ります。
公衆衛生上はそれを放置しておくわけにはいかないので、誰かが動かなくてはなりません。
葬儀が“社会化”されている国家も存在する
単身世帯の増加についてですが、世界で単身世帯が増加しているのは日本だけではありません。
日本の単身世帯率は32.9%ですが、海外、特にヨーロッパや北欧では、単身世帯率が40%を上回る国も珍しくありません。
これらの国では葬儀をどのように行っているのでしょう?
シニア生活文化研究所所長の小谷みどりさんが、この問題について海外の取組みを紹介しています。
それによると、台湾では2012年から「連合葬祭」制度という合同でお葬式をする制度がスタートしました。
この制度はどのようなものかと言うと、遺体の搬出から納棺、葬儀の施工、火葬費用に至るまで遺族の負担は一切なく、財源は市民からの寄付ということです。
希望者には無料でお墓の提供もあり、樹木葬、庭園散骨、海洋散骨などの方法があります。
参考:小谷みどり「”多死社会” 日本-変わりゆく葬送・お墓事情」Nippon.com 2018年2月22日
このような自然葬が広がった背景には、台湾は土地の面積の割に人口密度が高く、納骨堂を作ろうとしても広さに限界があることにありました。
また、不動産屋によってお墓用の土地の値段のつり上げられることも社会問題となっていました。
このため政府や自治体が政策目標として自然葬を推進し、今の状態があるようです。
参考:「環境にやさしい自然葬の時代」台湾光華雑誌 2010年5月
また、前述の小谷みどりさんの記事によれば、北欧のスウェーデンでもこのような社会的な葬儀システムがあるそうです。
キリスト教徒は教会に会員費として、そうでない人は国に税金として葬祭費のような費用を納めることにより、墓地代や葬儀代など葬儀にかかる負担を国が負担してくれるシステムとなっています。
一人一人が積み立てる形態ではなく、社会全体で費用負担するという考え方だそうです。
日本でどうやって死を社会化する?
日本では、これまで介護や葬儀は家族が担ってきました。しかし家族の形態も多様化しており、「介護、葬式は家族がやってくれるから大丈夫」と言う状況ではないケースも増えてきています。
家族に頼る事が難しい場合、どのように葬儀や死後の手続きをすればいいのでしょう?
お金がある方の場合、身元保証会社に死後の手続きを任せるという方法があります。
この市場は単身高齢者世帯が増加するとともに拡大しており、葬儀代行だけでなく、入院時の身元保証を請け負うサービスもあります。
ただし、2023年の段階では国家的な規制はなく、NHKで業者のトラブルが報道されたりしているので、業者選びには注意が必要です。
参考:「【なぜ】高齢者の身元保証サポート事業 総務省が初の実態調査」NHK 2023年8月7日
問題に対する別のアプローチとして、いくつかの居住支援のNPOでは、利用者同士の互助を行うことでこの問題を解決しようとしています。
身寄り問題の当事者である人同士がいっしょに万が一の時のことを語り合い、終末医療や葬儀、死後事務について自分の意思を残しておきます。
そしてその人が亡くなった時は、皆で弔い、託された死後事務を行おうという試みです。
やどかりサポート鹿児島の“つながるあんしん事業”
やどかりサポート鹿児島でも、まだ実験的段階ではありますがこの当事者の互助による葬儀の試みは開始されています。この取り組みは“つながるあんしん事業”と言う名前です。
つながるあんしん事業の参加希望者にはつながるファイルというノートを受けとります。
ノートには終末医療に対する希望や、葬儀の希望、部屋の片付けなどの死後にお願いしたい事務をそれぞれが記します。
一人で自分の終末期について記述するのは、とても大変です。いつかは死ぬことは分かっているのですが、いざという時に人工呼吸器をするか、心臓マッサージはどうするか?部屋にある物はどうするか?亡くなったことを誰に伝えるのか、等々もろもろのことを考えるのは、とてもエネルギーのいる作業です。
なので、「つながるファイルを書く会」と言うサロンを開き、皆で話し合いながら自分の意見をまとめていきます。
やどかりでつながるあんしん事業を開始したのは2021年のことなんだ。
それから2023年まで、事業の参加者で亡くなられた方はいなかった。
だからやどかりでも、本当に参加者の方が亡くなられた時に、このファイルがどのような効果を発揮するのかが、実はまだ分かっていないよ。
ただ、我々は普段考えたくないですが、死はどのような人にも、自分自身にも、平等に訪れるものです。
いつも先送りにして考えてしまう自分の人生の終わりについて、つながるファイルを書くという形で同じような状況にある人と共有しあえたことは、それ自体が重要な体験なのではないかと思います。
お盆の法要
やどかりの利用者さんで、つながるあんしん事業が始まる前に亡くなった方たちがいます。
また、事業に参加していない人で亡くなった方もおられます。
その人たちを偲ぶため、8月13日に互助会のひとつである「ゆくさの会」のメンバーが主催して、お花を用意するなどお盆のお迎えの準備をしました。
鹿児島には直前まで台風6号がやってきて、利用者さん達のLINEグループでも話題になっていましたが、有難いことに、当日には台風は過ぎ去り、良いお天気になりました。
やどかり交民館には、鹿児島ゆくさの会の仲間たちと、やどかりのスタッフ15名ほどが集まり、これまでに亡くなった6名の仲間を偲びました。
その方にお願いして、特別にお勤めをしていただきました。
やどかりでは、特に特定の宗教を信仰しているわけではありません。
でも、亡くなった友人たちを偲ぶ気持ちは、宗教には関係ない人間の自然な行いとして、この世に生きている私達の心を一つに結びつけてくれているのではないかと感じました。
亡くなった仲間をきちんとご供養できてよかった。
そしてみんなで心温まる時間を共有することができて、本当に良かったです。
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